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ボカロとか東方とかWJとかが好きなかんりにんの、夢とか日々とか妄想とかが詰まった小さな部屋。

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そして連投する第4弾。ネギトロっておいしいね!(^q^≡^p^)
空中デートと言う名の飛び降りネギトロ。あ、グロ要素は一切ないのでご安心を。そして険悪でもない、むしろらぶらぶ。

そんな感じの第4弾、お楽しみください。
あ、拍手ありがとうございます!すごくうれしいですもう本当にありがとうございます(*´∀`*)


◆ ◆ ◆

 その行為に及んだ理由は、私の周りには見当たらない。ただ、彼女がしようって言ったからしただけだ。でもその事実を素直に説明しても、大人たちは信じてくれない。というか拒絶される。なにか理由をつけて私たちの及んだ行為を正当化したいらしく、何度だって大人たちは嘘だと一蹴する。なにかあったんだろう、正直に言ってみなさい。何回も何回もその言葉を聞いたけど、本当なんだねと認めようとしてくれるのは、十何年も一緒に居る親ではなくて最近会ったばかりの警察だけだった。正直に言っているのにそれを虚実にしようと必死な両親の言葉を通り過ぎて、私は呆けながら彼女のことを思う。今どこにいるかもわからない、彼女のことを。



 珍しく彼女から電話が来た。周りの人らと同様彼女も普段メールでやり取りをしてくるのだが、大切な要件があるときはきっちり電話で話をする。だからこれは何か重要な着信なのだろうとのんきに思いながら着信ボタンを押した。

「もしもし」
「もし。あのさ、明日五時に学校来れる?」
「…普通考えて、それってPMよね?」
「ううんAMだよ」
「さようなら」
「ああ待って切らないで!」

 通話を切ろうと耳からケータイを離し、ボタンに指を掛けた。けれどひどく慌てた彼女の声が私の動きを制止した。一連の動作を巻き戻し、再び通話を続ける。

「…私をそんな時間に駆り出す理由を教えて。納得できなかったら行かない」
「あ、切らないでくれてありがとう。んで、理由はないy」
「さようなら」
「強いて言うなら!強いて言うなら、ルカちゃんが好きだから!」
「……知ってる」
「おお…切らないでくれて以下省略。納得したよね」
「…はぁ」

 彼女に聞こえるようにわざと大きく息を吐く。だけど、そう、結局いつもそうだ。彼女がたとえばいくら常識外れな言動をしたって、反論しつつ最終的に共犯者となってしまうのだ。

「呼び出しといて自分が遅れたりしたら一生口利かないから」
「…現時点ですでにちょっと怒ってんじゃん」
「当たり前でしょ。そういうことならもう寝るから切っていい?」
「あは、ごめんね。大好きだよ、愛してる」
「……おやすみなさい」

 そして今度こそ、通話を切った。それから明日の登校の準備をして、早々部屋の明かりを落とした。


「あ、おはよルカちゃん」
「…おはよう」

 今までに味わったことのないほどの眠気を背負って、指定された時間に校門の前にいた彼女と会った。半分寝ている私と違って、彼女は平常と変わらないほど元気だ。

「で?当然まだ門は開いてないけど、何するの?」
「へへー。開いてなかったら、どうしたらいいと思う?」

 そう言って、彼女は指先で門に取り付けられた南京錠を指先で触れる。よく見ると、それはすでに解錠されていた。

「この手のカギの解錠方法は勉強済みなのです」
「…用意周到ね」

 鼻を鳴らして胸を張る彼女に、別にほめてないと斬った。そもそもこれ、不法侵入じゃないかしら。不安を抱えつつ校内に入ると、彼女が内側から再び鍵をかけた。この学校の門は格子状になっているので、内側からでも鍵を掛けられるというわけだ。

 時間が時間なので風景はまだ暗く、そのせいか空気が冷たい。隣にテンションが高いのが居るが、それよりも眠い私は持ち前のスルースキルを発動させる。トイレの辺りにさしかかった時、彼女の足がそちらに向いた。ちょっと待ってて、と言って押し戸を押し中に入っていった。なんでこのタイミングなのかは突っ込みたかったけど、いかんせん眠すぎる。今にも落ちそうな意識を保つのに必死なのだ。
 そんなこんなで最終着いたのは、私たちの所属する教室。まぁ当然と言えばそうなのだけど、この鍵の解錠法は習得していないらしく、私たちは冷えた廊下の窓から空を眺めていた。

「…星、あんま見えないね」

「ちょっと明るくなってきた」

「あはは、眠そう」

 彼女の発する言葉以外、ここに音はなかった。普段はあまり聴かない無音を配慮してか、いつの間にかミクが音を立てないように窓を開けていた。冷たい空気が開け放った窓から流れ込む。寒さに少し身を震わせると、壁にもたれて膝を抱えた。
 しばらくの後、空を仰いでいたミクが私の方に振り返った。どうしたのかと問うと、ミクははにかんで笑い声を漏らす。それは、言いにくいことを言う時のミクの癖だ。あまり明るくないおかげで彼女の表情を細部まで読み取ることはできなかった。私の目には、ぼんやりと、哀しげな表情の彼女が見えて。

「――…空、飛んでみようかと思って」

 その言葉で、その顔の意味を何となく理解して。

「ごめんね、眠いのに。でも朝しか都合がよくないんだよ」

 その一言で、いつだってわがままで、そのくせ何かの折に謝ったりする彼女を愛しいなんて思ったりした。

「…よーするに、しにたいの?」

 うまく回らない頭でなんとか言葉を吐き出す。なんでそんなこと言うの?とか私のこと嫌いになったの?とか相談なら乗るよ?とか普通ならかけるべき声は、その時私の頭の中に一切なかった。

「ううん、そうじゃないよ。ただ、空を飛ぶのってどんなカンジなんだろうな、って思って」

 彼女がその行為に及ぼうとした理由は、そんなメルヘンな思考の末のことらしいけれど。

「それで、しんだらどーすんの?」

 ここは童話の中じゃない。死んだら、それこそ空を飛んだって無意味だ。
 意識が飛び飛びの割に思考は冴えていて、話題の割に無感動で返す。彼女は考える素振りをして、普通の会話みたいに返事した。

「どうもできないねぇ。でもどうにかするために、こんな低い建物選んだんだよ」
「…4かいもけっこーたかいとおもうけど」
「それより低いと、ただ痛いだけじゃないかな?」

 そう、その時の私は普通じゃなかった。ふつうなら、こんな会話の後に窓枠を跨ごうとする彼女を全力で止めただろう。ばかなことはやめろと泣き叫んで、暴力に訴えてでも。
 今思うとすべてが策略だったんじゃないかと思ってしまう。私が朝に弱いのを知ってて早朝に呼び出したこと。今から自分のすることを冗談めかして話したこと。天気が快晴だということを踏まえて、実行日を今日にしたこと。

「…私をおいていくの?」
「…一緒に、来てくれますか?」

 何度も繰り返すが、私は正常じゃなかった。私の言葉を受けて笑いながら差し出された手を、微笑みながらうれしさを持って取るなんて。

「もちろん、どこまでも」

 そう返事させたのは紛れもなく、ミクと自分自身だった。彼女となら死んだって構わないという気さえあったのは、私がミクを好きだったからにほかはない。眠気?そんなもの、あってもなくても関係ない。そう、当時の私は言い切っただろう。

 私たちは明け方の空、手を繋いで宙に舞った。



 今となってはすべて過去の話だ。メインであった空を飛ぶという感覚も、正直よく覚えていない。夢現で覚えているのは、握った彼女の手のひらの感触ぐらいか。

 親や先生、警察の人らが私のベッドを取り囲む。運よく死なずに済んだ私は、折れた骨の治療のために入院していた。彼女とはあれから会っていない。生きてるのか死んでしまったのかさえ知らない。大人たちに質問攻めにされて、そのすべてに一つの答えを返す。「ミクが飛ぼうって言ったから」と。そしてそのあと親が彼女を許さないと私が居ることに遠慮もせず言うのだから、即座に言い返した。彼女を許さないと言うなら、私も許さなくていい。罪があるのは彼女だけじゃない。私だって同じことをしたのだ。彼女のあの行為を、私は止められないどころか一緒にしたのだ。なのにどうして彼女だけが責められようか。一気にまくし立てて言い切ると、普段本音をぶちまけることがない私が怒鳴ったのに驚いたらしく、両親は目を丸くして口をだらしなく開けたまま固まってしまった。
 それから警察にいくつか業務的な質問をされたので、素直に答えた。おどおどしている親の目線が気に障ったが、それよりも今は大切なことがあった。

「あの…。ミクは…私と一緒にいた子は、今どうしてますか?」

 そう尋ねてみたけど、まるで彼女が最初から存在しなかったかのように警察は口をつぐんだ。生きているとも死んでしまったとも言わず、彼らは帽子を脱いで一礼した後病室を出て行った。しばらくして両親も明日また来ると言い残したきり帰って行った。
 そうして独りになったこの部屋で、私はもう一度彼女と笑いあう未来を想像しては、ここが病院であることも忘れて子供みたいに泣きじゃくった。呼吸をするたびに患部がズキズキと痛む。それでも涙は止まってくれなくて、明るい未来を想像することも止めてくれない。プラスなことを考えれば考えるほど、それがマイナスだった時が恐ろしく怖い。埋められない恐怖を抱いて、私はひたすら彼女の生存を願った。

 その報せを聞いたのは、それから数週間後のことだった。

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