ボカロとか東方とかWJとかが好きなかんりにんの、夢とか日々とか妄想とかが詰まった小さな部屋。
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あげてると思ってた!!春ネギ第3弾です!!
学パロ放課後片想い系ネギトロ。鈍感×一途を目指してみた。
◆ ◆ ◆
何度目かの席替えで、私の座席は窓側の後列というベストポジションを獲得した。それから数日、日直に当たり学級日誌をつけていた放課後のことだった。
「まだ終わらないの?」
「うわあ!え、ミク…?」
突然聞こえた声に、肩を大きく揺らして握っていたペンを落とす。窓からひょこっと顔を出したのは、親友である浅葱の彼女だった。普通はそこに人の顔など見ることがないので、必要以上に驚いてしまった。私の反応があまりに大げさだったから、ミクが「そんなお化けでも見たような反応しないでよ」と笑いながら言い、窓の桟をまたいで私のクラスに侵入してくる。冷静に考えればここは一階なので、先生に見つかって怒られさえしなければこれぐらいのことは容易にできるのだった。しかしまたなんで窓から入ってきたんだろう?
「そんなのテキトーに書いて早く帰ろうよ」
そのテキトーができないのだから困る。それでなくとももう少しで終わりそうだったので、その旨を伝えてもう少し待ってもらうことにした。
最後の記述欄である「今日の感想」がどうにも埋まらない。今日という日に特に感想なんてないのだから書きようがない。「春の割に寒かった」とか面白味のないことぐらいしか思いつかないので、隣で肘を立てている彼女に意見をうかがう。
「今日何かあった?」
「…ん?んー…」
私の手元を覗き込み私の質問の意図を理解した彼女は、うめきながら天井を見上げた。と思ったらすぐに戻ってきて、笑顔で答えをくれた。
「ルカがかわいい」
「…え?」
声が裏返った。いきなり何を言い出すんだ、この子は。
「いや、今日の出来事…」
「だから、今日もルカがかわいい」
「え、あ、ありがとう。でもそんなこと書けないよ」
「なら私が書いてあげよっか?」
「えんりょします…」
なんだこの会話。なんで、いきなりそんなこと言いだしたの?いやほめられるのはうれしいけど、それは私の質問にそぐわない。そんなこと、日誌に書けるわけがないのだし。
少し口を尖らせて、机に肘枕を作って頭を置き、じゃあ聞かないでよと言われた。つい先ほどの彼女の返事を、いったい誰が予想できただろう?拗ねてしまった彼女はそのままに、仕方がないので隣の席の子がその隣の席の子の落とした消しごむを拾ってあげていたことを書いて冊子を閉じた。
「終わった?」
「うん」
「じゃあ早く帰ろ!」
「もうちょっとだけ待って」
パタパタとスリッパを鳴らして、私は教卓の中に日誌をなおした。それから席に戻って帰る準備を始める。
「…あ、ねぇ」
「んー?」
机の中の教科書やファイルをカバンの中に入れつつ返す。しかし次の言葉が聞こえないので手を止めて顔を上げると、そこにはなぜか頬を薄く朱に染め何かに耐えるような表情をした彼女と出会った。
「どうしたの?」
「…ん。なんにもない」
尋ねても、彼女はふにゃっと笑って始まってもいない話を終わらせた。よくわからないけれど、とりあえず作業を再開させる。
「…放課後の教室に二人きり、か」
「…?おまたせ」
「待ったよー!さ、帰ろ」
片付けが終わって彼女に声をかける。すると今まで哀愁漂っていた彼女の様子が一変、いつもの元気なミクに戻った。今日のミクはよくわからないけど、その気持ちも忘れて彼女との帰り道、楽しくしゃべりながら帰路を歩いた。
***
「…放課後の教室に二人きり、か」
ルカは私のこの焦がれるような気持ちに気付いてない。だからきっと、不意に気付いてしまったこのシチュエーションに、私がどれだけ緊張してるかも知らない。ちょっと悲しい気もするけど、それでも私は彼女の親友であるミクで居続ける。この気持ちはそう呼ぶにふさわしいものだけど、彼女をそう呼ぶのは今の世間にはそぐわない。弱虫の言い訳だってわかってるけど、それでも私はその一歩を踏み出すことはしないのだ。
君の隣で景色を見られるなら、さびしくたって今のままでいいんだよ。
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