忍者ブログ
2026.06│ 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30

ボカロとか東方とかWJとかが好きなかんりにんの、夢とか日々とか妄想とかが詰まった小さな部屋。

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

おーごんでんせつでメガ特盛りネギトロをみてテンション上がったかんりにんです。

と、とりあえずできたぞ…!ミク誕小説後篇です!
急いで描いたんで、この話はきっと誤字脱字だらけ、文章の流れがおかしい、等々あるかもしれません。
明日また見直しますので、なにかへんなところがあったらおしえてくれるとうれしいです…!あと、目次には明日入れます……!今日はほんっと時間無い………!!


「ただいまぁ…」
 来た道そのまま帰った私は、直射日光に身も心もやられてヘトヘトの状態で家に着いた。久しぶりに声を出して、靴を脱ぐ前に上り口に座り込んだ。もうここから立ち上がれそうにない。とりあえず、私は履いていた靴を適当に脱いで、そのまま膝を抱えた。と、そのとき。
「ミク姉おはよっ!」
「ぅわっ」
 朝からテンションの高い声と、背後からの衝撃。視界の端でさらさらと金髪が流れる。胸の前で手が組まれるのをちら、と見ながら、私は後ろを振り向いた。そこには、嬉しそうな楽しそうな表情の。
「…おはよ。リン」
「うん。ミク姉、たんじょーびおめでと!」
「へへ、ありがと」
 わかってたけど、いざ言葉にされるとやっぱ照れる。私は今日、この世界に生まれて3年目になる。
 あれから3年。初めは批判も多かったけど、今じゃ私を必要としてくれる人たちもだんだん増えてきてる。長いようで短いようなその時間は、確かに私たちを繋いでくれた。
 ふっと背中にかかっていた力が抜けた。白いリボンの妹は、パタパタと足音を鳴らしながらリビングの方へ後ずさりしてる。
「今日はミク姉のたんじょーパーチーだから、呼ばれるまでここ入んないでねー!」
 そんな遠くにいるわけでもないのに、リンは大きく手を振っている。その空気に流されて軽く手を振ると、わたしはよっこらせと立ち上がって階段の一段目を踏んだ。なにやらリビングは私限定立ち入り禁止らしいから、部屋にこもっていよう。
 自分の部屋のドアを開けて、そのままベッドに飛び込んだ。とにかく疲れた。ちょっとお昼寝でも、してよっと。……と、その前に。めんどくさいけどもう一回起き上がって、クーラーのリモコンをいじる。起動音とともに早速送られる冷風を浴びながら、倒れるように寝転がった。そして私はため息のような息を吐いて、静かに目を閉じた。

○   ○   ○   ○   ○
 
「ミクちゃん、誕生日おめでとう!」
「へへー。なんか照れちゃうね」
 カーテンの向こう側はもう薄暗くなった頃。
 気づけば私の部屋にはルカがいて、彼女と二人ベッドの上に座って談笑していた。
「うん、ありがと」
 リンに言われた時と同じ。少し、というか、結構照れくさい。へへへ~と笑ってそれをごまかすと、彼女もはにかみ顔で微笑んだ。やっぱルカは、笑ってる時が一番かわいいな。できればずーっとそのままでいてほしい。…あいや、ルカはどんなときでもかわいいし、きれいだけど。うん。なんたって私のルカだしね。あたりまえじゃんか。
「…ミク、ちゃん……?」
「…………あ、」
 そんな妄想を繰り広げてるうちに、私はルカに言われて初めて、その顔を見つめていたことに気付いた。その証拠にほら、少し戸惑っているようなルカの顔。
「……あ、え、っと………」
 何か言わなきゃ。何か、何か。
 そう思うのとは裏腹に、私の中で何かが熱を帯びながらどんどん膨らんでいく。何か言わなきゃどころじゃない。いつの間にか大きく弾み始めた心臓がビックリするぐらいうるさくて、それ以外に何も聞こえない。どこからこんなに発熱してるんだろう。身体中が過熱して、このまま動作不良でも起こしそうなぐらいに熱い。なのに、体温を下げるための汗はこれっぽっちも出てこない。いろんなアクシデントに並行して、だんだん困惑していく自分もいた。どうしようどうしよう。何を言えばいい?どうすれば、何をすれば、…何をしたいの?唯一の頼みの思考回路さえも混乱状態。完全に私テンパってる。理解可能なのはその一項目だけ。ああ、もうなんにも考えらんない。なんならもうこのまま倒れてしまおうか、と思った瞬間。
「み、ミクちゃん……、」
 バクバクうるさい頭の中にも、その声だけはしっかりと届いた。あたりまえじゃん。恋人からのメッセージだよ?…なんて考えてる余裕ももちろんなくて。
 仕事を投げ出した脳を無理やり働かせてその瞳を見返すと、その顔はほんのりと赤く染まっていた。なんでだろう、と思う前に、私は今の自分と彼女の状況が似ていることに気付いた。目を見開くのと同時に、もしかして…なんて期待を寄せる。でも、これは、きっと。期待するだけムダだよね。だって、きっとじゃなくて、たぶん絶対そうだもん。
「―――…ル、カ」
 ぎこちなくその名前を呼ぶと、短くぎこちない返事が返ってきた。
 
 ああ。もう、頭使わなくて済むや。
 
 私は彼女の左頬に触れた。するとルカは柔らかくほほえんで、ゆっくりと目を伏せた。
 そして私の名前を呼ん―――――



「ミクっ!!」

「はへっ……!?」
 ガバッ!ガツン!…ドサ。
 さっきまで聞いていた声と全然違うそれが、私の耳を震わせた。反射的に身を起こすと、額に何かが強く当たって、衝撃で再びベッドに倒れこんだ。そんな効果音。
 ぶつかったところがあんまり痛くて、手で患部を押さえながら唸ると、私のじゃないもう一つの唸り声が聞こえた。私よりも少しだけ低い、ソプラノ。
「あ゛ーっ!ったぁ………!」
 首をそっちに向けると、私と同じく倒れて額を押さえているお姉ちゃんが。
「めー、ちゃん…?」
「…なに?」
 右腕を避けて、お姉ちゃんは片目だけで私をとらえた。私をとがめたくて、でもできない。みたいなまなざし。ごまかし笑顔を向けると、お姉ちゃんはわざとらしく息を吐いて立ち上がった。
「ったく…。何回起こしても、起きないんだから」
「起こし…?!」
 それを聞いた途端、私はついさっきまでのアレが全部、夢だということを嫌でも知らされることになった。心のどこかでは分かってたけど、やっぱ現実にあんな都合のいいシーンがそうそう訪れるわけがないか。…なんて、軽く落胆できるはずが無く。
「あのままいけたなら、私起こされたくなかったなぁ…」
 そう吐いてから、そういえば夢は起きる1分前から見始めるんだっけ。とか。正直、やるせない。現実にあんな場面、今のままじゃ絶対起こり得ないから…。今すぐ目を閉じて、その続きを見てみたい。夢の中の私とあのコは、あの先一体どこへ行くんだろう。
 …まだ寝足りない。
 ふと、眠気が復活したから、そのまま寝ちゃおうと目を閉じた。
「まだ寝ないでね。もう用意できたから」
 私の先の行動を見据えたらしいお姉ちゃんは、釘をさすように言った。
「……え?用意って……?」
 うっすく目を開けてお姉ちゃんに聞き返す。するとおねえちゃんはにこっと笑って言った。
「夕飯。できたわよ」
 ゆうは、ん?夕飯…?・………雄藩??
 一人混乱する私に、お姉ちゃんは腕に付けていた時計を見せてくれた。だけどおかしなことに、アナログ時計の短針は、どう見ても7の数字を指している。目をこすってみても、瞬きしてみても。私の記憶上確かならば、布団に入ったのは8時過ぎだった。朝の。
 ……ん?じゃあ、あれ………?私、
「……………………………………………11じか、ん?」
 お姉ちゃんは仕方ないわね、と言わんばかりの顔をしてる。きっと、私の思ってることが筒抜けてるのかもしれない。
「ついでに、今日がなんの日かもわかってないでしょ?」
「へ……?」
 今日…?……………なんだっけ??
 お姉ちゃんは私にリビングに来るように言って、先に部屋から出て行ってしまった。ほけーっとそれを見届けた私は、とりあえず体を起こすと、一瞬次に何をすべきかを忘れて途方に暮れた。
 
 …あ、リビング行かなきゃ。
 職務放棄90%の脳が導きだした答えに、自然と体は動く。ベッドから降りて、ドアまで行って、部屋の外に出て、階段を降りる。ふらふらとリビングの戸の前まで歩いて、それを開けて部屋に入った。ら。

パンッ!!

「たんじょうび、おめでとう!!」

 重複した乾いた音が、私の周りで鳴った。ほぼ同時に祝福の言葉が飛び交った。遅れて視界に紙やらなんかが舞う。それらがはらはらと舞い降りて、ようやく状況が見えた。けれど何を考えるヒマもなく、職務放棄98%の脳はパニックを起こすだけだった。高低並んだ5つの顔を見ていると、なんだか恥ずかしくなってくる。明度の差はあるけど、みんな笑顔で私を見てる。私一応16歳なのにな。みんなの扱い方がちょっと子どもっぽくて、だけどうれしいと思ってるから、私はまだ子どもなんだろうな。
「――…ありがと」
 俯きがちになったのと声が少し震えてしまったのは仕方ない。…ことにしとこう。だってこんなの、するいじゃん。…ああそういえば、一番最近のルカは泣いてたっけ。2回も。あの時はなんで?とか思ったけど、うん、わかる気がする。だって―――

(そんなうれしそうな顔で見られたら、涙の1つや2つぐらいあるよね)

「…ね、うれしいよ。ありがとう」
 きっとうまくはなかった笑みを浮かべて、私はもう一回言った。ホントは何回でも言いたいけど、キリがないから。
 私の言ったそれを聞いたみんなは、同じように笑ってる。と、そこでリンが前に出てきて、私に一礼した。つられてお返しをすると、リンは気合いの入った笑顔を残してくるっと振り返った。なにをするんだろうと、と見ていると、リンは他の4人と目を合わせた後、大きく両手を広げた。合わせて4人の顔が少し真剣味を帯びる。リンの両手が上がるのを合図に、一斉に息を吸って、声を出した。

 聞こえたそれは、よく聴き慣れた歌。誰かが誰かの誕生日を祝う時の、英詞のもの。

 さすがに発音はめちゃくちゃだった。ルカはともかく、私含め他のみんなは英詞を歌えないから。それを英詞に聞こえるように日本語で歌ってる。だけど正直、上手下手なんて気にならなかった。高音なお姉ちゃんやリン、レンの声、それよりもう少し低いルカ、低音のお兄ちゃん。それらがひとつになって、私の誕生日を祝ってくれてる。技量なんて気になるわけがない。気になるわけないよ――。
「はっぴばーすでーとぅー…」
 ああ、終わっちゃう。
 そう思った途端、私の目から涙がこぼれた。けれど私の意識にそれは無くて、ただ紡がれていく音を、目で、耳で、体で感じることしかしていなかった。
「ゆー……♪」
 名残惜しかった。まるで、線香花火が儚く散っていくように。
 ただただ優しく奏でられたその歌は、私の心の隅々に響き渡って、反響する。家族が私のために歌ってくれた、世界でたった一つの音。幸せな気分を、音の無くなったこの空間で少しの間満喫していた。きっと、目の前の家族たちも。
「…ありがと。………ありが、と」
 ポロポロと零れ落ちていく涙と一緒に、ぽろぽろと言葉が声になる。
 
 ありがとう。
 
 その単語しか今は、言えなかった。

「どういたしまして」
 図ってか知らずか、みんなの声がかぶった。一拍置いてはははと笑うと、みんなも一緒になって笑ってくれた。
 ああ。私は幸せ者だな。
 涙を拭いながら私はしみじみと思った。この家族の一員でいられて、私はホントに幸せだよ。ねえ、もっとありがとうを言わせてよ。そう思うと同時にお姉ちゃんが言った。
「さ。みんな、ご飯にしましょうか」
 ミクもお腹、減ったでしょ?
 そういえば、私お昼食べてないんだっけ。それを思い出すと、正直すぎるお腹はばつの悪いことなんか知らないで鳴いた。
「ミクちゃん、お昼食べてないものね」
 くすくすと笑いながら言われて、ぼっと顔が赤くなる。
 こんなタイミングで鳴るなんて…!
 恥ずかしすぎて何も言えないまま、私は食卓の定位置に着いた。
 テーブルの上に並んだ料理に気付いて見てみると、どれも私の大好物ばかり。その真ん中には、これでもかというぐらいにどっさり積まれた刻みネギ。それを見るだけでテンションは上がるのに、豚汁に冷奴、そばまで、ネギにあうものもそろってる。…あ、ネギ焼き…!これだけ好きなものがそろっていて、改めて今日という日を自覚した。
「気に入ってくれた?」
 半ばうっとりとしながら食卓を眺める私に、席に着きながらお兄ちゃんは聞いた。自分の世界に入りかけていた私は、急に呼び戻されて焦った。びくっと肩を揺らしてそっちを見ると、お兄ちゃんはいつもに増してにへらとしている。
「うん…!もう早く食べたいよ……!」
 言いながら、きっと今の私は目を輝かせてるんだろーな、とか思った。お兄ちゃんとレンが顔を見合わせてる。このメニューは私の要望に沿いつつ、2人が決めたものかな。女組は私(とリン)以外料理しないし。
 ネギの香りが鼻をかすめると、ますますお腹が減ってきた。催促しようとした時、お姉ちゃんが言った。
「じゃ、食べましょーか」
 全員ほぼ同時に手を合わせてお約束。

「いただきますっ!」


「あー、食べたなぁ…!」
 ぼふっとベッドに倒れこんで、人知れずそんなことを呟く。クーラーの効いた部屋で、きゅうと抱きしめた枕は少し暖かくて、気持ちいい。今日一日寝ていたここは、食事の前と後では感触がまるで違うように思えた。疲れた時に寝転がると何も感じようとしないから、今はその逆ってことか。いいことだね。
 楽しかった。
 もちろん、食べきれないんじゃないかと思うぐらいに用意されたたくさんの料理は全部美味しかった。自分でも引くぐらいに白いご飯が進んで、おかずもパクパク行けた。炭水化物のメインはそばだったけど、ご飯の上に卵と醤油とたっぷりのねぎさんをかけてたべるとすっごいおいしい。世間ではそれを「卵かけごはん」と呼ぶのだけれど、私のそれは「ネギかけごはん」だった。そばはつゆと一緒に絡めたネギがそばのうまみをより引き立てて、最高のパートナーだと思った。夕食そのものとして考えたら、それはそれはおいしかったです。ごちそうさまでした。
 だけど、それよりも、みんなとの会話がおもしろかった。いつも誰かの誕生日になるとなんであんなに盛り上がれるんだろうと思うぐらい、会話は弾んだ。リンは今日の設営の話ばかりしてた。クラッカーを買いに行ったのは双子で、お釣りでおかしを買ってもいいってお姉ちゃんに釣られて行ったらしい。その間お兄ちゃんはのんびりアイスをほおばってお腹壊して、お姉ちゃんはソファで爆睡。ルカが何をしてたのかは、リンも本人も言わなかった。だいぶ食いついてみたけど教えてくれなかったから、それはもう聞かないことにした。味噌汁をすすりながら、ちぇっ、なんて言って。あの大量にあった刻みネギは、レンとお兄ちゃんが一生懸命に刻んでくれたんだって。まあ、今ではもうお無くなりになったけれど。あと、無制限に出てくると思われたお姉ちゃんのお酒は、お兄ちゃんが爆睡したそのひとに代わって買ってきたみたい。お店と家とを何往復かして。双子も行けたら楽だったかもしれないけど、あの2人は外向き14歳だからね。売ってくれないよね。だから2人はクラッカー担当。で、料理はみんなで作ったって。大半はレンとお兄ちゃんがやって、その他カンタンな作業はリンとお姉ちゃんもやって。それはいつもと一緒かな。
 でも、1つだけ引っかかってるのが、ルカの仕事がぜんぜんないってこと。あの子何やってたんだろう。…ちょっと、気になるな。
 ごろっと体を転がしてうつ伏せになる。枕に顔を埋めると、私の匂いがした。当たり前、か。なら、ルカが1人で何かしてたのも、当たり前なのかな。
 急に淋しくなってきた。ルカは、ルカだけは、きょうの設営に携わらなかった。1人他のことしてた。しかも、それを教えてくれない。…なんだろ。私に知られちゃいけないことでもしてたの…?ねえ、教えてくれないと疑っちゃうよ、ルカ。もしかして、もしかして、って。
 知らずのうちに枕を強く抱いていたことに気づいて、余計に不安になる。もしかしたら、とか、考えたくもないことを嫌だけど考えちゃう。似合わないくせに深く考えちゃうのは、私の悪いとこかな。それはでも、ルカのせいなんだけど。
「あーもーっ!」
 考えるのは似合わなさすぎる。
 私はガバッと起き上がって、お風呂でさっぱりしようと部屋を出る。ドアノブに手を掛けて、さっきまでの自分に軽く嫌気がさしたから思いっきりドアを開けてやった。すると、なぜかものが当たる音と、確かな手ごたえ。目の前で桜色が、下へ引っ張られるように流れた。…………あれ?
「うぅ~~~~~~~~~~~~~~~っ………!!」
 足許で唸るアルト。そこに転がっているのは、さっきまで散々私を悩ませた張本人。
 ………2回目……。
 右手でおでこを、左手で鼻を押さえる彼女を一瞬眺めた後、冷やすものを取りに行こうとした。一歩目を踏み出すと同時に、しかしそれは足首に触れた手によって止められる。しょーみ言って、触れたというよりは掴んだ、なんだけど。
「ぐあっ………!?」
 撃沈。思い切りこけて、鼻とか額とかを強打した。これで誰かが何かにぶつかるのは3回目。…厄日かな。
「わ……!ミクちゃんごめん…っ」
 ぱっと手を離して私に投げかける。私はというと、それどころじゃない。本日2回目の衝撃に、額は悲鳴を上げている。下手したら切れてるんじゃないかと思うぐらい、そこだけ発熱してる。あと鼻はホントにヤバい。折れた?折れてない?そう言いながら身を起してルカの方を見ると、その顔の配色が明らかにおかしい。なんで赤…!?
「ルカ、鼻!」
「え…?」
 とっさに叫ぶと、ルカは言われた所を手で押さえて、離した。そこには、赤い液体。
「……鼻血?」
 なんで疑問形?てか気付けよばか…!
 私は素早く立ち上がると、開けっぱなしのドアの向こうへティッシュを取りに行った。1枚ずつ持っていくのが面倒で箱ごと持ちだして、ルカの隣に膝をついた。
「ほら、これ当てて」
 そう言いながらティッシュを2,3枚取ってルカに手渡した。それから保冷剤を取りに階段を駆け下りて、リビングにある冷蔵庫へ走る。冷凍室にあったそれを雑に出して、洗面所の棚からタオルも取って、階段を上がった。廊下の突き当たり左側がルカの部屋で、その手前が私の。その辺に座っているルカは、渡したティッシュを鼻の下に当てて私を待っていた。主人の帰りを待つ犬みたいだ、なんて全然カンケーないことを思いながらそばへ寄ると、タオルにくるんだ保冷剤を彼女の眉間の辺りに添えた。
「止まりそう?」
 聞くと、ルカはティッシュを外した。だけど血は止まってなくて、つぅっと垂れてくるそれをもう一度拭いた。そして、その手を鼻の下に置いた。
「ごめんね。全然気付かなかった」
「え?…あ、ううん。わたしもぼーっとしてた」
「んー…。おもっきり力入れたからなぁ…。折れてなかったらいんだけど…」
 ルカは骨弱そーだから心配だよ。
 保冷剤越しに彼女に触れてるから、思ったより距離が近い。ふと、一番最近に見た夢のことを思い出した。
 …ヘンなタイミングで来たな。
 保冷剤を持つ手は冷やされているはずなのに、手汗が滲んできた。私は慌ててそれを掻き消そうとする。……そうだ、さっきまでのことを思い出せ。ルカは1人裏で何かしてたんだよ?そう自分に言い聞かせてみるけれど、それがその場しのぎだということが分かってる頭は違うことを考え出す。そう、あの夢のことを。じわじわと体温が上がってくるのと同時に、頭の中が白く染まっていく。合わせて焦燥感に煽られて、身動きが取れなくなる。
「…ミク、ちゃん……?」
 ああ。また、きた…。これ、やっぱ顔に出てるのかな…?
 すでに凍てついて動かない頭をそれでも動かして、何か話題を振ろうと辺りを見回す。
「あー、…うーとぉ……」
 そろそろ間が持たなくなると思った時、ルカのすぐ後ろになにかが転がっているのが見えた。ピンク色の、なにか。ようやっと、避難口を見つけられた。私は迷うことなく声をかけた。
「ル、カ?それなに?」
 空いている手でそれを指す。するとルカはこっちまでびっくりするぐらい驚いて、肩をはねた。
「あ、え…?」
 上手く頭が回ってないみたい。意味のない音を重ねて、この場をごまかそうとしてる。私はせっかく見つけた出口を逃すまいと、追い打ちをかける。
「それ。」
 詰んだ。ルカは観念したように小さく息をついて、手探りでそれを拾って、私に差し出した。
「これ…、え?」
 顔を赤くしてそっぽ向いてる彼女と、よく似た桜色の足。彼女の髪に見立てたそれが、8本。………たこルカだ。たこルカのぬいぐるみ。無邪気に笑う様子のそれは、よく見なくても形がちょっと歪んでる。手作りっぽい。
 もしかして、これ…?
「…私、に?」
 彼女の頭がゆっくりと揺れた。縦に。どうやらこれは、私への誕生日プレゼントらしい。思わず保冷剤を手から離して、それをよく観察する。力を加えるたびにふかふかとするそのぬいぐるみは、歪だけど彼女にしたらかなり上手い。
「………………………………………………失礼なことをお聞きしますが、」
 そこまで言って、私はルカの反応を待った。どんな反応するかぐらい、だいたい分かってたけど。予想通り、彼女は「は?」みたいな顔してる。…なんか、主人の考えてることが分からない犬みたい。……今日このネタ、多いなぁ。
 彼女が大した反応を示さないから、私はそのまま続けた。
「…………これ、ルカが作ったの……?」
 言いきってから、前振りをやめておけばよかったと思った。失礼なことって言っちゃった。ルカは心底心外そうな顔をして、それからぼそっと呟いた。
「…………………そうですけど」
 あと、保冷剤冷たい。
 冷めた口調で言われて、私はごめんって謝りながらルカの太ももに落ちていたそれを再び手に取った。そろそろ溶けてきたそれを、代えてこようか迷って、やめた。この時間が、もったいない。元のポジションにそれを当てると、むすっとした表情の彼女が言った。
「……リンちゃんに、教えてもらったの」
「…?」
 ……ああ、ぬいぐるみのことか。一拍置いてから、私は理解した。リンは裁縫得意だからね。ルカの低スキルでもここまでのものを作れたのは、きっとリンの教え方がよかったからだろうな。
 さっきから視線を浴びていたことにやっと気づいて、私は「どうかした?」と尋ねた。すると彼女の表情は一変、ふわっと柔らかく微笑んだ。

「誕生日、おめでとう」

 近い笑顔が眩しかった。
 私はその眩しさに耐えられず、つい目をつぶってしまった。
「……ありがと」
 彼女に見えるようには、ちゃんと笑って見せたけど。



「やーしかし、こんなものくれるとは思わなかったよ…!」
  もらったたこルカを撫でながら、私は感激の意を込めて言った。ルカはふふ、と笑って、これを作ろうと思ったきっかけを話してくれた。
「わたしの誕生日にははちゅねくれたでしょ?」
「ああ、うん」
「だから、お返し」
 おかえし、ね。ただのお返しにしちゃあ、結構感動するね。
「ん、ありがとう」
 もうとっくに溶けちゃった保冷剤を手でぐにぐにいじりながら、本日何回目かわからない「ありがとう」を言った。
「ルカにしてはがんばったね」
「うん。まぁ、料理とか買い出しとか全部みんなに任せちゃったけどね…」
 …え?全部任せ……………!?
 ………あぁ、なるほど。そういうことか。はいはい、そういうことね。おk。
「ごめん。」
「?」
 私なりの心からの謝罪は、彼女の中では理解不能という言葉で片づけられたと思う。別に気にはしないけど。むしろもう一回ごめんなさいを言いたい。
 ずっとティッシュを押さえっぱなしの鼻は、もう出血が止まってもいい頃だろう。私は彼女に聞いた。
「血、止まった?」
 一瞬ぽかんとした表情を見せてから、ルカはそれを取った。
「あ。……………うん。止まってる」
「そっか。よかった」
 どうやら骨は折れてないみたい。よかった。ルカのきれいな鼻筋が、私のせいで壊れちゃったら大変だもんね。
 私は彼女の前髪をかきあげて、白い肌にそっと唇を寄せた。
「―――――――――――っ?!」
 顔を真っ赤にさせるルカを眺めながら、私はもう一回、言葉を繋いだ。

「――――ありがとうね」


拍手

PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
メールアドレス
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
無題
おぉっ

前編の時点では私、てっきりマスミクかと・・・
むにらしくミクルカ来たねww
ミクが悶々してるの良いよねぇwww
むちゃかわええです
マーヌ URL 2010/09/18(Sat)14:46:27 編集
この記事へのトラックバック
この記事にトラックバックする:
←No.186No.185No.183No.181No.180No.173No.179No.178No.177No.176No.175
カレンダー
05 2026/06 07
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30
最新CM
[05/29 かんりにん]
[05/26 死烏]
[05/19 かんりにん]
[05/19 死烏]
[05/15 かんりにん]
ブログ内検索
↓直連絡先↓
かうんたー