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ボカロとか東方とかWJとかが好きなかんりにんの、夢とか日々とか妄想とかが詰まった小さな部屋。

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と、とりあえず、ね?書き上がったとこまで上げときます。
あと、タイトルはまだ考えてないので、決まったら目次の方にも足しときますー。


 私のマスターは、なんかヘンなとこでテキトーだ。

 今日は絶対仕事入ると思ったのに。事前連絡はなかったけど、あの人は直前になって言うことの方が多いから、そのつもりで昨日は早めに布団の中に入って今日早起きしたのに。それでも軽く寝坊して、ダッシュでデスクトップに来たのに。

「……ログインしてない、の…?」

 膝に手をついて、走ったせいで荒くなった呼吸を整える。
 なんで?ルカの時はあんなに早くに呼び出されてたのに…。まさかマスター、まだ寝てる…?え、ウソ。そんなコトあるの?…………いや、あの人ならあり得ちゃうかな。学校の日いっつも寝坊してるし…。ケータイの方に行ってみようかな。んで、起こして仕事もらおう。
 私はマスターのケータイに潜り込むべく、ネット回線の入り口へと向かった。ここ――デスクトップからなら、そう遠くない。夏真っ盛りの海辺の背景に浮かぶ島に、それはある。まあ当然そこへは船で行かなきゃなんだけど、幸いにも船着き場には舟が一隻見える。あれに乗せてもらえれば、きっとすぐに着けるはず。私はその船に乗るために、太陽の照りつける地面を蹴り出した。

「あの、乗せてもらってもいいですか?」
 波止場に着いた私は、その船が乗船用かどうかを確かめるために、そこにいた黒髪の少年の背中に声を掛けた。すると少年は私に気づいたらしく、こっちを向いて、何故か目を丸くした。綺麗なほどに統一された、黒い瞳。こんな目は見たことない。半ば見とれながら、少年の返事を待つ。
「…いいですよ。どこまで行きますか?」
 にこっと笑って、言った。船の乗務員かな?まだ小さいのに、すごいなぁ…。
「えと、1の島までお願いします。…あ、コレ、使えるかな…?」
 そう言って、胸ポケットの中に入ってるカードを取り出した。これ、なんかややこしい名前がついてるんだけど、わかんないから私は“なんでもカード”って呼んでる。その通り、これ1枚で何でもできるっていうもの。それを少年に渡すと、そのコはへぇ、とか呟きながらそれを見て、手に持っていたスキャナーに通した。
「きみ、VOCALOID?これ期限ギリギリだったよ。危なかったね。」
「あ、ありがとう」
 返却されたそのカードをポケットの中にしまいながらそう返す。期限切れてなくてよかった。心の中で安堵する。
 少年はなにか券を切ると、その半分を私にくれた。
「中へどうぞ。席は自由だけど、もし酔いそうなら入って右手の階段を上がったら屋外だから」
 あそこまでなら、酔う前に着いちゃうけどね。
 言われた通り中へ入って、右手の窓側最後列の座席に座った。けれど船のエンジン音がうるさくて、真ん中の方の席に座りなおした。朝早いからか、そこには私以外のお客さんはいない。貸切みたい。これなら、発声代わりにちょっと口ずさんでみても怒られないね。…しないけど。
 ……………………………ていうか、なんで寝坊したマスターのために、わざわざ船乗ってケータイまで行かなきゃいけないの?ちょーっとおかしいよね。……あ、こういうのをふじょーりっていうんだっけ?………。帰ったらルカにでも聞いてみよ。
「本船間もなく出発いたします。多少揺れますのでご注意ください」
 車内……、船内アナウンスを聞いて、小さくはーいと返事する。誰に言ったわけじゃないけど、今のこの場の雰囲気がなんとなく寂しかったから。
 扉の近くに立っていたひとがそれを閉めて、窓の向こうにいるひとが船体を手で押す。船が波止場から離れた頃、そのひとは船に飛び乗って、エンジンは動き出した。
 目的の島はもう軽く見えてるから、5分もたたないうちに着きそうだ。

 …………………………………………………………………………………………歌でも、歌おうか。

 雰囲気が、嫌だった。だから私は、去年の今日にマスターからもらった歌を、声でそっとなぞってみた。
 それは今のマスターの曲調からじゃあんまり考えられない、バラード調の優しい歌。あの頃のマスターは、そうだなぁ。一言で言うなら、柔らかかった。私はあの人の実生活をよく知らないけど、作る曲はすごく暖かかった。歌ってるこっちも暖かくなれるような、そんな歌。3分弱しかないその時間を、私は大切に歌にした。マスターも私の声にしつこいぐらい文句を付けた。今思えば、それだけ思い入れのある曲なのかもしれなかった。だって、その曲が出来上がった時のマスター…………。
 私の唇から再生されていた曲が終わるとほぼ同時に、船内アナウンスが耳に入った。
「まもなく、1の島で一時停船いたします。下船の際はお忘れ物の無いようにお願いいたします。なお――」
 …………やっぱり、3分って早いね。それだけの時間のために、私は怒られて怒られて、何回も同じ旋律を歌ったんだから。
 船が船着き場に着いて、係のひとに下船の指示を受けてから、私は席を立った。出口には、さっきの黒髪の男の子。
「…歌。うまいね」
 微笑みながら、話しかけてきてくれた。まさか聞いてたとは思わなかった。私は少し恥ずかしくなって、ぺこっとお辞儀をして足早に船を降りた。
「乗船券の提示をお願いします」
 降りた先そう言われて、慌てて乗船券をポケットから出して提示した。
「ありがとうございます」
 確認が済んだそれをもらって、再びポケットの中へ入れる。そして、目の前にある建物へと一歩踏んだ、その時。ふいに後ろを振り返ると、そこにいたはずの少年はいなかった。
 ………中、戻っちゃったのかな。
 私は視線を戻して、マスターの元へ向かった。

 “Internet Explorer” と表記された建物の中に入ると、またカードを見せるよう指示されて、そろそろめんどくさいなと思いながらカードを出す。
「ありがとうございます。目的地への行き方はご存知ですか?」
「はい。だいじょうぶです」
 何回か行ったことありますから。
 受付のひとは私のその言葉を聞くと、得意のえいぎょーすまいるで私を見送ってくれた。受付の向こう側へ歩くと、そこは、ただ真っ白な空間。……………………………な、はずなのに。あれ?なにこのでっかい門。
 私の記憶とは全然違う目の前の風景に、私は茫然とした。ちがう。ここから白いだけの道が何通りにも張り巡らされてて、道番号が描いてある看板を探さなきゃだったのに。あっれー?なにこの『おれのしかばねをこえてゆけ』的な立ち方。
 真っ黒な門が、思いっきり私の行く手を阻んでいた。どうしたものかと、一番天辺が見えないほど大きいそれをただぼーっと眺めていた。っていうか、こんなのだれが作ったの…?……あ、プログラム書き変えたら10分でできるか。んー…。どうしよ。案内のひとには分かるって言っちゃったし、今更戻って聞きに行くのもなんか恥ずかしいし…。あー……………………………ん?なに、これ……?
 私は自分のすぐ右手にある、門の凸面に気がついた。よく見るとそれは、開閉ができるみたい。下の方に付いてるひっかけ部分に爪を掛けて、くいっと上に持ち上げた。するとそこには、0~9の数字が規則正しく並んでいる。……これ、もしかして。もしかして、看板の番号を押したら行けるとか、そういうノリ…?え、と……。
 ヘッドフォンの記憶媒体にアクセスして、メモしておいたマスターの携帯への番号を出してくる。マスターは自分のPCにあまり情報を置かない人だから、今は逆に助かる。軽く100ケタぐらいある(こともない)数字を順番に入力する。全部入れ終わると、さっきまであんなにだんまりだった門がすっと開いた。上に。私の微かな期待を見事に裏切って、それは上にスライドした。外見の大きさに反比例した通り口の小ささに私はまたしも裏切られたように思った。2メートルぐらいの高さ。それをくぐるとその先は、マスターの携帯の待ち受け画面。
 ………着くの早くね?ってか、道が全然なかったんだけど。まあ、歩く時間省けたからよかった………!?
 何の前ブレもなくメモ帳が開かれた。慌てて画面の隅っこに移動して、カメみたいに入力されていく文字列を見る。そこには、
「なんできたの!?」
 わーごめんなさいマスター。っていうか、起きてたんだ。
 私は音声文字化プログラムをメモ帳に接続して、思いっきり叫んでやった。
「曲作ってくれないから催促しに来た!マスター今日何の日か知ってる?!」
「知ってるよ!ならミク、私今どこにいるか知ってる?!」
 ……………へ?家じゃないの?
 私は疑問をメモ帳にぶつけた。すると、マスターの返事は一言。

「学校!」

 ……………………………………?!!
 
 パッとカレンダーを見る。今日の日付は8月の31日。なら、まだガッコないんじゃ…?急いで予定表まで走る。みると8月31日の予定には、きっちり4限までの時間割が書きこまれてる。
 …え?じゃあマスター夏休みは?
 ページをめくっていくと、8月23日の予定に一言、“始業式”とだけ書かれていた。
 ………………うわ。うわなにこのじょーきょー。え、もしかして、私カン違いしてた…?もしかしなくとも、これカンペキにしてたよね……?………うわ。うわうわ。うわはずかし…っ。

 しばらく立ち竦んでいると、急に電源が切れた。瞬間、私は無意識のうちに足を進めていた。
 もう口にするべき言葉なんてない。

 帰ろう。とりあえず帰ろう。

 私の頭の中はそれだけで一杯だった。


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