ボカロとか東方とかWJとかが好きなかんりにんの、夢とか日々とか妄想とかが詰まった小さな部屋。
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そういうことはあんまり分かんないかんりにんです。でもまぁ結局はリンルカということですはい。
ミクルカ以外でやってみようということで、リンになった理由はとくにありません。っていうか、妹にランダムで選んでもらいました。
一応言っておくと、今までのミクルカと世界が違います。パラレルワールド的な奴です。浮気とか、全然そんなんじゃないです。一重に言う、「単発」ってやつですね。
ルカができたばかりの頃の話。…っていう設定なんで、ルカの日本語がカタコトなのは仕様です。
今回は比喩表現と言うか、言葉にいろんな意味を含んでみましたー。…とか言っても、頭悪いかんりにんが作ったものなんでね。フツーに分かると思いますが、あんまりつっこまないでやってください。
「ムラムラする」
あたしがそう言えば、桜色ははてなと言うように首を傾げた。そこでもうちょっとびっくりするとか、そういうのないかなぁ。あたしの言ってる意味がわかってるのかも定かではない。この子はとにかく知らなさすぎる。いろいろと。
設定年齢的に言えばあたしと桜色は6歳も違うけど、稼働年数じゃあたしのほうがお姉さん。だからなんだって話だけど、まだできたばかりの彼女に伝えたいことが伝わらない、というのはあたしにとってはいらいらする要素の他ならない。どれだけ必死で物事を伝えようとしても、経験値の差があたしと桜色のコミュニケーションを邪魔する。仕方がない。これは、これから重ねる年月のみが解決できる問題なんだ。わかっていても、やっぱり辛い。もっとしゃべりたい。もっとあたしを知ってほしいし、桜色を知りたい。けれどそれは叶わずに、彼女を知るどころか会話することさえままならない。
結局いらいらが募って、あたしはすっかりお決まりになってしまったセリフを口にしてその場を去った。お決まりになってしまった、寂しそうにこちらを見つめるスカイブルーを見なかったことにして。
お決まりだなぁ。
荒い足取りで自室に戻ったあたしは、ベッドの上で本を読んでいた弟の頭を小突いてからそう思った。小突くというよりは、たたくの方が正しいかも。
いかにも痛そうに頭頂部を押さえる弟を下に見ながら、なんでいつもこんなことをするんだろうと小さく考える。だけどその行為に意味なんてなくて。
まただめだったのかよ。
半ば独り言のように弟は言った。あたしはその場で膝を折って、弟と対面する形で座り込んだ。
「……ごめん」
「…なんでおれに謝ってんの」
ふしぎそうな顔でそう言う弟を、そのときばかりは優しいな、と思った。
「頭。痛かったよね…」
伏し目がちに言って、手を伸ばして打撃点にそっと添える。さっき衝撃を受けたばかりのそこはちょっと熱っぽい。途端に熱い何かが胸の中でふくらんで、同時に自分がみじめに思えた。どれもこれもしょうがないことなのに勝手にいらだって、大切な弟を傷つけて。
「………ばかみたい」
ゆっくり手を離し、そのまま力を抜いた。力が働かなくなった右手はだらん、とベッドの上に落ちた。手首を少しひねったけど、これっぽっちの痛みですべてが上手くいくわけもない。だからそれを顔に出すことはしなかった。
「ばか。考えすぎ」
自分とよく似た声が聞こえて、ぱっと顔を上げた。目の前にはあの人と種のちがう青い瞳があって、それに驚いて上体を後ろに反らした。弟は片手に持っていた本を置いて、足を組み直してから空いた手を足首に置いた。それをただ黙って見ていると、ふいに顔が近くなった。なんだろう、と思った瞬間、弟はふっとほほえんだ。
「ばかだな。リンは」
ごちっ。
額から弟の温度が流れてくる。触れたそこからじわじわと、いっしょに感情までも伝わってきそう。
「…頭良くないくせに、考えすぎなんだよ」
何のためらいもなく「頭良くない」と言ったことをとがめたかったけど、まじめな口調で言われてタイミングを逃した。あたしと同じ青の向こう側にはもう一人、今にも消えてしまいそうな小さいあたしがいた。
「大丈夫だよ。ちょっとずつ、ちょっとずつ進んでいけばいいんだよ」
急ぐ必要はないんだし、さ。
くやしいけど、その一言でだいぶ救われた気がした。そうだよね。時間なんて、あきれるぐらいにたっぷりあるんだから。今から1ページずつ、ゆっくり彼女と向き合えばいいんだ。そうしたら、日に日にページは増えていく。ノートも増えていく。ノートの数だけ、あたしは彼女と成長する。いつまでかかるかはわかんないけど、いつまでだって彼女と付き合っていく。
「…それでいいんだよね」
「なにが?」
独り言でも話しかけているように聞こえるニュアンスに、弟は首をかしげた。思わず笑みをこぼすと、さっきまでの表情がうそだったかのようにふくれた。だけどそれは、別に不機嫌だからとか、そんなんじゃなくって。
「なんでもなーい」
きょとんとした様子で見つめるその瞳の中に、あたしはもういなかった。
「おやつあるけど、2人とも食べる?」
ドア越しにソプラノが聞こえてきて、そこであたしは今まで額を寄せあっていたことに気付いた。2人一斉に顔を離して、同時に返事した。それから同じタイミングでぱっと目が合って、いっしょに笑った。
「…行こっか」
「おう」
今日のおやつは、めー姉の手作りどら焼きだった。ホットケーキの間にあんこときなこと黒ごまを混ぜたものを挟んだだけのシンプルなものだけど、それがたいそうおいしいのでした。
「あ、こら!リンまた上っつらだけはがして!」
「いーじゃん!これおいしいんだよ?」
そんな言いあいをくり広げているうちに、小さい足音が聞こえてきた。
「あ、みなさんおそろいでしたか」
戸の開く音とともに桜色は現れた。あたしはどきっとして、口の中にあったどら焼きがのどに詰まりかかってそこにあったコップの中の水を一気に飲み込んだ。水といっしょに胃の中へ流れ込んだのを感覚でとらえて、ふう、と息をついた。
桜色はそのまま歩いて来てあたしの目の前に座った。いくらテーブル越しだとはいえ、真正面から向き合うと緊張する。しかし桜色は緊張もなにもないようで、にこにこしながらあたしの方を見ている。そんな気楽な態度でいられるのは、なんかずるい。なんであたしだけ、こんな、どきどきしなきゃいけないの…?っていうか、おやつは食べないのかな…。
いつのまにか、あたしと桜色の間で沈黙が続いていた。そこだけなにかで切り取られたような、別世界にでもいるような気がした。ただひたすらに真っ白な、なにもない空間。いるのはあたしと桜色だけ。そんなかんじ。
「あ、あのさ…」
「こういうの、いいですね」
黙然とした空気を破ろうと声を発したのに、桜色のアルトにさえぎられた。
こーゆーのってどーゆーの?それを聞く前に、桜色から切り出してくれた。
「この、静かな空気、ですよ。にぎやかなのもいいです、けど、やっぱり…」
その続きは、彼女のまだ作成したばかりの日本語ライブラリには登録されてないらしい。うー、と唸って、それから首をかしげた。けど、それって。
「…しずか?」
「はい」
彼女も、あたしが感じている空間にいるのだろうか。いや、いなければ静かなんて言わないはず。
「…そうだね。あたしも、そう思う」
「そうですか!静か、いいですか」
「うんっ」
そう返して、最後の一口を口に放り込んだ。
「リンちゃん、どこ行くですか?」
上り口に座り込んで靴をはくあたしに、その声の持ち主は言う。あたしはひとまず靴を履き終えて、立ち上がった。
「買い物。いっしょに行く?」
彼女の方を向いてそう聞くと、水に入れられた魚のように元気な返事をしてからブーツに足を入れ始めた。
せっかくだから、ちょっと回り道して行こうかな。きっと桜色はこの辺の地理なんて分からないはずだし、いちいち説明しながら行くのもいい。今日は涼しいから、ある程度なら付いてこれるだろうしね。
「リンちゃん、お待たせしました」
「いいよ。んじゃ、行きますか」
「はい!」
あたしは駆け出すように家を出た。後ろで桜色のテンションの高い声が聞こえる。
すぐそこにあるマンホールが、太陽の光を反射して輝いていた。
